黒本が手元にないのでウロ覚えの記憶で書きます。
千里眼の眠り猫はサボリ場所を探しています。
誰かさんとかぶりますね、っていう話。
それだけです。
たまにはこーゆう、色気も毒気もない話でもいいかもしれない、と勝手に思うことにします。
千里眼の眠り猫はサボリ場所を探しています。
誰かさんとかぶりますね、っていう話。
それだけです。
たまにはこーゆう、色気も毒気もない話でもいいかもしれない、と勝手に思うことにします。
「あら?」
その、ちゃちいドアを見つけて、猫田は首を傾げた。
非常階段の下にあるが、避難通路用のドアではないことは一目瞭然だった。避難通路用ならステッカーが貼ってある筈だ。
軽そうな、取って付けたようなドアだった。きっと安上がりだ。
だが、猫田の好奇心がうずうずと湧き上がってくる。
あそこはきっと、何か面白い場所に違いない。
「…………開いた」
そっとドアノブを回すと、案外あっさりドアは開いた。予想通り軽かった。
最初に感じたのは埃の匂いだ。それから温度。籠った空気が、曇りガラスからの日差しでゆっくりと温められた、間接的な暑さだ。
どう見たって物置だった。どこかで収納しきれなくなったらしい長机やパイプ椅子。何が入っているか分からないダンボール箱の数々。どれも表面にうっすら埃が乗っている。
「いつからあるのかしら、コレ…………」
少なくとも新棟が出来た時からだから、そう長くは経ってない筈なのだが。それとも、一階部分が出来た時点で、どんどん物を突っ込んだのか。
何故だか息を潜めたまま、猫田はゆっくりと奥へ進んでいった。
「え」
窓からの光が広く落ちる場所がある。スポットライトのように床を照らしているその場所に、寝転がる男を見つけて猫田は瞬間ぎょっとした。
猫田が息を詰めると、間遠な寝息がさして広くない部屋に満ちる。
張り詰めた息を吐いて肩の力を抜くと、今度は男の方に関心が向いた。傍にしゃがみ込んでしげしげと観察してみた。
「医者、じゃないわねえ。学生だわ」
自分のカバンを枕にして寝息を立てている男は、どう見ても学生の年齢だった。幼いと言ってもいいかもしれない。着ているものも、草臥れたジーンズにTシャツ、チェックのネルシャツ、パーカーというカジュアル過ぎるもの。新任の研修医だってもう少しかっちりした格好をする。病院といえども「職場」だからだ。
頭の傍に文庫本が一冊投げ出されていた。
ここで寝転がって本を読んでいて、そのまま眠りに落ちてしまったらしい。手に取るように解った。
「にしても…………」
学生が病棟の物置で昼寝なんて、大胆というかずうずうしいというか。他人事ながら彼の将来が心配になってきてしまう。
だが、猫田より先にこの場所を発見した彼には敬意を表することにした。
猫田は忍び足でそこから離れ、そっとドアを閉める。猫田が入ってきたことに気付いてなかった彼は、猫田が出ていくのにもやっぱり気付かないままだった。
物置の中に比べると、外の日差しは直接的過ぎた。瞬間視界が白く塞がれて、猫田は視線を地面に落として瞬きを繰り返した。やがて眼が外の明るさに慣れる。
猫田は一つ背伸びをして歩き出した。
折角見つけた場所だったが、先住者がいるらしい。学生を無理に追い出す気もないから、あの場所は彼に譲ることにしよう。
大体、あそこは猫田が務める病棟から遠い。藤原婦長の気配を感じる距離で巧く昼寝場所を探すのが醍醐味なのである。
「おやすみ、よい夢を」
一つ笑って、猫田は軽い足取りで病棟へ戻っていった。
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COMMENT
和みます
こんにちは。
今回はネコさんと田口先生のファーストコンタクトですね。
確かにネコさんならあの場所を知っていたのかもしれませんね。
そして約20年後に当時いたいけな学生だった田口先生を小児愚痴外来にてこき使うに至るというわけですね^^
すごくほのぼのしていて心が和みました。
今回はネコさんと田口先生のファーストコンタクトですね。
確かにネコさんならあの場所を知っていたのかもしれませんね。
そして約20年後に当時いたいけな学生だった田口先生を小児愚痴外来にてこき使うに至るというわけですね^^
すごくほのぼのしていて心が和みました。
Re:和みます
いらっしゃいませ、こんにちは。
あんないい部屋をホントに誰も知らなかったのか、というのが疑問だったんですよね。てゆーか、あそこで寝てて誰にも見つからなかったのか、とか。
ゲリラは知ってるっぽかったですよね――。将軍と魔人は知らなかったみたいだし。見つけそうだとしたら、眠り猫くらいかな――と。
直接コンタクトはしなかったけど、「将軍のお友達」ってことで猫さんは行灯先生のこと知ってたんじゃないかなと思います。「将軍の片思い相手」とかで認識されてたら、ますます頭上がらないな、将軍(笑)。
少しでも和んでいただければ幸いです。
あんないい部屋をホントに誰も知らなかったのか、というのが疑問だったんですよね。てゆーか、あそこで寝てて誰にも見つからなかったのか、とか。
ゲリラは知ってるっぽかったですよね――。将軍と魔人は知らなかったみたいだし。見つけそうだとしたら、眠り猫くらいかな――と。
直接コンタクトはしなかったけど、「将軍のお友達」ってことで猫さんは行灯先生のこと知ってたんじゃないかなと思います。「将軍の片思い相手」とかで認識されてたら、ますます頭上がらないな、将軍(笑)。
少しでも和んでいただければ幸いです。