伝説ネタバレ注意報&オリキャラ登場注意報発令中
「マドンナ~」の第2回、まだ読んでないなぁ。霧島は図書館タダ読み派です。「極北~」に名前だけでも将軍や行灯先生が登場するらしいので、実に楽しみにしております。
後記:ヤバいっ! 意外と長くなった。3回です。
書きたい一言までいかなかったよ――っ。
「マドンナ~」の第2回、まだ読んでないなぁ。霧島は図書館タダ読み派です。「極北~」に名前だけでも将軍や行灯先生が登場するらしいので、実に楽しみにしております。
後記:ヤバいっ! 意外と長くなった。3回です。
書きたい一言までいかなかったよ――っ。
「来てくれたんですねっ」
○月×日の朝10時、桜宮水族館に現れた田口の姿を見て、件のラブレター差出人・矢沢啓二は喜色を浮かべた。
「どうも……えっと、矢沢さん?」
田口は戸惑いながらちょっとだけ頭を下げた。
実のところ、矢沢の顔もうろ覚えなのだ。
デパート火災の修羅場では、患者の顔など覚えていられなかった。一人一人に真摯に対応したという自負はあるが、それはそれ、これはこれだ。
先日、矢沢がラブレターを田口に押しつけた時に会ったはずなのだが、矢沢はさっさと立ち去ってしまったので、じっくり顔を見ていない。
そんなワケで、田口は矢沢を少し観察してみた。
背は田口より高い。平均的な男性よりも高いだろう。
若い。ひょっとしたら田口より一、二歳下かもしれない。
左手にガーゼが貼ってあって、ネット包帯を被せている。デパート火災の時の怪我かと思い当たった。
「…………照れるな」
そんなにジロジロ見ていたつもりはなかったのだが、矢沢は顔を赤らめて小さく呟いた。
その反応に、田口はしまったと思う。ヘンに気分を盛り上げる方向になっては拙いだろう。
「あのですね……」
「入場券買っておきました。はい、田口先生の分」
話の口火を切りかけた田口を制するように、矢沢は水族館の入場チケットを田口に差し出した。矢沢の手にはもう一枚、彼の分のチケットがある。
「払います」
「いいんです、僕が強引に誘ったんですからっ」
そう言われてチケットを押しつけられて……こうなると、田口に断ることはできなかった。
水族館の前でさっさとお断りしておしまいにしようという、手軽な手段はこの時点で却下だ。水族館の分は付き合うしかない。
「行きましょ、田口先生。僕、黄金地球儀ってまだ見てないんですよ」
「はあ…………」
矢沢のセリフに、田口は薄らぼんやりした反応を返すしかなかった。
ふと、視界の片隅でゴソゴソ動く影に気付く。
振り返ってみたが、取り敢えず何も見えなかった。
「…………お。気付いたか?」
「行灯が気付くかよ」
田口が一度こちらを振り返ったので、島津はちょっと身体を縮めた。そのまま息を詰めて待つ。速水が喉の奥で笑った。
頃合いを見て再度そーっと顔を出せば、田口は連れと一緒に水族館の中へ入っていくところだった。
「中入ってったぜ」
「ここって何か目玉あったっけよ?」
「金色のでっかい地球儀が新館にあるんだとさ」
「ふぅん」
そんな話をしながら、島津と速水も入場券を買って館内に入っていった。
噂の黄金地球儀は日本だけが黄金だ。
作られた当時はニュースになり、人が押しかけ、その人出もまたニュースになり、結果田口は行きそびれた口だった。
「人いないですね。三年前はあんなに騒がれたのに。あんまり人がいるんで、僕なんか却って見に行く気無くしちゃって」
「俺もです」
「そうなんですか。田口先生も初めて?」
田口の一言一言に、矢沢は嬉しそうな反応をする。
田口は次第に居た堪れなくなってきた。
気まずさを誤魔化すために、黄金色の日本からアルミ合金製のユーラシア大陸へ視線を飛ばす。
広大な大陸に二つの影が写り込んで、田口は後ろを振り返った。
田口が振り返ると同時に影はささっと消え、またも影の主は確認できなかった。
だが、確信はした。
田口はこっそり溜息を吐いた。
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