偶像マリアでNG

これは拙作「偶像マリア・３」からの一発芸です。
そちらを先に読んだ上でお読み頂けると、話が早いかと思います。


単なる思いつきですので、まあ深く考えずに、続きをどうぞ。
ちなみに本編には一切全然全く関係ありません。

キスされる、と咄嗟に思ってきつく眼を瞑った。

「だっ…………」

場所とか羞恥とか、そういったものは田口の頭から吹っ飛んでいた。

「黙って見てないで助けろ、彦根ェ―――っ!!」



「ちょっと待てえっ!!」

速水は物陰から飛び出して、盛大に怒鳴った。
田口の大声にたじろいだ相手から田口を掻っ攫い、胸倉を掴んでぐらぐら揺さぶった。

「何でそこで彦根だよっ。俺だろ？　話の展開的にもサイトの趣旨的にも、そこは俺の名前だろっ?!」

速水の勢いに、田口はぎこちなく眼を逸らした。

「あ――いや、その…………悪い、間違った」
「間違っただぁ？」
「いや、その、な。学生ん時から、絡まれるたんびに彦根に助けてもらってたから、つい…………」
「…………ちょっと待て。お前そんな絡まれやすかったのか？」
「何だかな――、彦根と一緒のときに限っていろいろ話しかけられてさ。アイツ根性悪ぃの。飴やらガムやらキャラメルやらで取引しないと助けてくれないんだぞ」
「……………………」

速水は眉間に皺を寄せて考え込んだ。
その不穏な気配に、田口も何となく黙り込む。
ようようにして口を開いた速水は、呆れた表情だったが田口をまっすぐに見つめて言った。

「お前もういい。ずっと俺の傍にいろ」
「は？」
「いーから。離れるなよな」
「え？　え？　何で？」

話の展開についていけない田口は目を白黒させる。
そんな田口を無視して、速水は田口の肘を掴むとそのままズカズカと歩きだした。
折角の告白を台無しにされている矢沢は、そのまま存在をスルーされた。



ちなみに彦根氏のコメント。

「だって田口先輩と一緒の速水先輩って、『寄んなコラ』ってオーラ飛ばしてんですもん。だから田口先輩と話したい人は、速水先輩のいない時を狙ってくるんですよ。僕のがまだマシだと思うんでしょ。もっとも、田口先輩には全然通じてませんけどね―――、あっはっはっ」