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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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サイトを更新しています。5月の分の再録スタートです。
キリリクは中身によって再分類かけております。
行灯女の子Ver.がスタートしたのもこの頃だな……苦手な方は避けて通って下さい。


すっかりお盆は終わってしまいましたが、怪談企画の連載です。3回になります。
霧島が書くものなんだから、怖くもないって。要は、幽霊が出てくりゃみんな怪談なんですから、霧島の場合。
その上今回、割とイチャイチャしてるかも……。
怪談苦手な方も是非読んでみて下さいませ。

余談ですが、「救命救急センター」と「救急救命センター」がすぐごっちゃになります。その度に伝説を開いて確認する始末。
今回は初っ端から間違って、慌てて訂正しました……。

「ちっ、ダメか」

到着した時点で手の施しようのない患者を見下ろし、速水は一つ舌打ちをした。
救命救急センターには、日々生死ギリギリの人が運ばれてくる。
将軍と呼ばれ、幾多の命をこの世に繋ぎ止めてきた男でも、救えない命はあった。
その度ごとに嘆いていては仕事にならず、いつの間にか感情のスイッチを切り替える術を身につけた。

「ったく、こっちが必死こいて働いているのによぉ」

だからこれは、自分の無力を嘆く愚痴ではない。
ただ世界の因果律に対する不平不満だ。
先程搬送されてきたのは、自殺者だった。救命救急センターには割と多い。
まだ若い、大学に入ったばかりの男だった。
速水は医者を生業としている、医者の本分は救うことだ。
一方で、自ら命を断とうとする者の何と多いこと。
昔、田口に聞いた神話では、黄泉の女神は一日一千人を殺すと宣言し、
地上の男神は、ならば一日一千五百人を増やすと宣言したそうだ。
速水の目の前には今、一千分の一が転がっている。

「わっかんねー」

速水には到底、自ら命を断とうとする者の気持ちなど理解出来そうになかった。



「…………や、み。速水」
「ん…………っ」

揺さぶられて目が覚めた。
近い距離にある影に焦点を合わせると、気遣わしげな表情の田口が速水の顔を覗き込んでいた。

「何…………?」
「酷く魘されていたから……大丈夫か?」
「ん…………」

田口の言葉に脳内の情報を反芻してみたが、特に酷い夢の記憶は出てこない。
だが、身体がべっとりと重いのが奇妙といえば奇妙だった。
これではまるで、日勤夜勤続きで三日帰れなかった日のようだ。
しかしそんな曖昧な状態を田口に説明出来ず、速水は田口の後頭部に手を伸ばした。
自分の唇まで誘導すると、田口の方から軽くキスをくれる。

「ちょっと疲れてるだけだ。ヤリ過ぎたかな?」
「……のバカっ」

冗談口を叩けば、田口は照れて視線を逸らした。速水の鎖骨に額を埋めて表情を隠してしまう。
田口の髪を指で梳き、もう一方の手で田口の腰を撫で、足を絡ませれば田口の唇から微かに甘い声が漏れた。

「ぅんっ……疲れて、るんじゃないのか……っ」
「お前がいれば何時だって元気になるさ」

事実、速水のモノは兆し始めている。舌を絡めて執拗にキスをした。
粘着質な音と、隙間から零れる吐息に煽られているうちに、頭の奥の方にある重い感覚は消えていった。



屋上の手すりに手を掛ける。金網の隙間に足の爪先を突っ込み、身体を持ち上げる。
上半身がフェンスより高い位置まで上がると、風が吹いて白衣が音を立てて膨らんだ。
少し身を乗り出せば、コンクリートで舗装された病院の駐車場が見える。
しかし地上を見下ろす速水の目は、焦点が定かではなかった。



頭の奥で、声が聞こえた。
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