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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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17000ヒットのみずな様からのリクエストです。
みずな様、キリ番ヒットおめでとう御座います&リクエスト有難う御座いました。

リクエストは「水着な行灯先生」です。雀メンバーのリクエストもきてましたので学生時代編で。
このリクエスト、ネット落ち渦中にメールで頂きましたので、みずな様にはさぞご迷惑おかけしたことかと思います。物凄い慌ただしい返信しか出来ませんでした……改めてお詫び&御礼申し上げます。

出来あがったのが以下で御座います。
みずな様、こんなの如何でしょうか? お楽しみ頂ければ幸いです。


「へえ。プールなんて高校以来だな」
「体育系の一般教養があっただろ」
「あったっけ?」
「出た覚えすらないのか、お前ら」

雀荘「すずめ」で卓を囲みながら、彦根が放り出した割引チケットについて先輩三人は好き勝手に喋っていた。
大学生協の一角には各種配布物が無造作に置いてある。その中に市民プールの割引券を見つけたのだ。
公営だから、規模は大きくない。中程度の流れるプールと普通の25mプール、児童用のプールがあるだけだ。
そして、割引と言ってもたかだか百円。
しかしこの年になると水泳などなかなかしないものだ。
彦根はそう思ったし、案の定、彦根の先輩たちも同様だった。
物珍しさが勝り、結局麻雀卓を囲む面子でプールへ繰り出すことになったのである。



「お前しっろいな~~っ」
「ほっとけ」

水着姿の田口を見て、真っ先に速水がからかった。
四人の中でも究極のインドア派の田口は誰より白かった。他の三人も屋内部活動ではあるが、それでも田口よりは日焼けしている。

「紫外線浴びないと、骨が脆くなるんですってよ」
「浴び過ぎると、皮膚ガンの発生因子になるんだぞ」
「どっちだよ!」

彦根と島津が正反対のことを言い、田口は声を上げて笑う。
速水は周囲を見回した。
夏の好天でそこそこに人が入っている。
しかし、目の保養になりそうな女性は彼氏連れ、子連れが多い。若い女性のみのグループというと中高生になってしまうようだ。女子大生グループの外出先に市民プールという選択肢は入っていないらしい。
速水が探す物に気付いた彦根は、同様に周囲を見回した。
そしてふと眼を止める。

「速水先輩、見て下さいよ。あれ、すっごくないですか?」
「どれよ?」
「ほら、あっち。あそこの監視員」
「野郎なんか見てどうすんだよ」

舌打ちしつつ、速水は彦根が指した方を見る。
プールサイドの高い椅子に座っていた監視員は、それはもう見るからに鍛えた体をしていた。田口と島津も目をやって、感心したように息を漏らす。

「確かに凄いな」
「筋肉標本になりそうだなぁ」
「あれ、ナルシストなんじゃねえの?」
「あ、そうかもしれませんね」

プールの監視員は大学生のバイトが多い。その監視員も、そう年齢は変わらないように見えた。
しかしその年齢でそこまで鍛える必要が何処にある。そう思うと、これはもう「鍛えるのが趣味」というヤツだろうと推察された。
ごちゃごちゃ話していた内容が聞こえたわけではないだろうが、噂の監視員は一同を見下ろしたようだった。それから何故だか彼は笑顔を作った。
日焼けをした顔の中から、白い歯がきらーんと光る。
……この時点で、何となくアヤシいと思うべきだった。



男四人でプールに来て楽しいか? と誰もが思ったが、これが意外に楽しかった。
25mプールで速水と彦根がクロール勝負をし、四人で素潜り耐久勝負をし、流れるプールでビーチボールを使ってバレーボールに興じている。ちなみにビーチボールは彦根が持ってきていた。

「ぶわっ」
「どーじ!」
「先輩、大丈夫ですかぁ?」
「行灯、ボール拾ってこいよ」

頭上を越えたビーチボールを首を逸らせて追った田口が、バランスを崩して水の中に引っ繰り返る。流れるプールの水流に乗りながら速水は笑い、島津も彦根も心配などしていなかった。

「お前が飛ばし過ぎるんだろー、バカ速水」

水から顔を出した田口は前髪を掻き上げて顔の水を払うと、流れに乗って先へ進んだビーチボールを追って、プールの中を跳ねるように進んだ。
軽いビーチボールは水の流れで先へ先へと進む。一方の田口は、水流を斜めに突っ切る形になってしまっているので、余り前へ進んでいない。
届きそうで届かない距離に田口が焦れた時、プールサイドにいた誰かが手を伸ばしてビーチボールを拾い上げた。

「あ……」
「はい、どうぞ」

一瞬、取られるかと思った田口だったが、その人物は軽く手首を利かせてビーチボールを田口の方へ投げて返した。力を加減してくれたのか、ポスンという軽い音を立ててビーチボールは田口の手の中に収まった。
見れば、件の監視員である。間近で見ると鍛えた体がますます強調された。

「あ、どうも、有難う御座いました」
「どういたしまして」

田口が拙く礼を述べると、監視員はまた白い歯を見せてきらーんと笑う。ウインクまで付いていた。
速水や島津、彦根達にも監視員の姿はよく見えていた。白い歯に輝くダイヤマークも、ウインクと共に飛んだハートマークも。
……この時点で、かなりアヤシいと四人は思った。
但し、田口と他の三人では心配の仕方が少々違っていた。



公営プールにも売店があった。軽食とジュース程度で割高にはなるが、わざわざ弁当を持参しない男たちには大いに活用すべきものである。
ジャンケンで負けた田口が買い出しに行くことになった。
右手に焼きそばのパックが入った袋、左手に缶ジュースの入った袋を引っかけ、フランクフルトを載せた発泡スチロールのトレイをそろそろと持ち運んでいた田口の進行方向を、何者かが遮った。

「ん…………?」
「やあ」

田口の前に立っていたのはプールの監視員だった。笑うと白い歯が光る。効果音まで付いているような光り方だ。

「え……あ、の?」

どうして声をかけられるのかが解らなくて目を瞬く田口に、監視員は一歩詰め寄った。厚みのある身体の迫力に田口はたじろいだ。

「白いですねえ……美しい。人魚のようだ」
「…………は?」
「俺の仕事、昼で終わりなんです。この後、俺と一緒に泳ぎませんか?」

最初のセリフはもう完全にワケが解らなくて、田口はマヌケな声を上げた。田口の反応をさらりと流して、監視員は田口を誘いにかかる。今度のセリフは田口の脳にも理解できた。

「友達がいるから……」

田口が穏当にお断りしようとしたところに、バチ――っン、と派手な音がした。
あれはきっと痛い。音だけでかなり痛い。

「ってえ!」

監視員が背中を押さえて振り返ると、ビーチボールがビニールマットの上に転がっている。田口には見覚えのある柄だった。
飛んできた方向を見れば、彦根が腕を大きく振っている。

「すんませ――ん、サーブすっぽ抜けちゃって!」
「ったく、下手クソめ。すいませんね」

田口の近くにきた速水が、足元からビーチボールを拾い上げた。
すみません、とか言いながら、速水の表情は思いっきり険しい。長身を存分に活かし、上から監視員を見下ろす形である。

「行灯、寄越せ」
「あ、おう」
「餓えた彦根と速水が五月蠅ぇったらねえよ。運動したら余計腹減るだろうにな」

やはりさりげなく現れた島津が、田口の手から一番重い缶ジュース入りの袋を取り上げ、田口を誘導して監視員から引き離した。その際に、監視員を一つ睨むのは忘れなかった。
田口が島津と共に安全圏まで去っていくのを確認すると、ビーチボールを手にしたままの速水は、監視員をじろっと見た。視線を上から下へ流し、ある一点で止める。
身体自慢の監視員らしく、着用しているのはピッタリした競泳用の水着だった。

「ふぅん……いっくら身体鍛えても、ソコは大きくならないモンなんだなぁ…………」

聞えよがしの独り言を呟いて、速水は立ち去った。
男としては最大の屈辱を口にされた監視員の顔色は白くなった。尤も、日焼けしているので、他の誰にもそうとは解らなかっただろう。



「お前は! どうしてあんな変態を引っ掛けるんだ?!」
「引っ掛けたくて引っ掛けたワケじゃない」

焼きそばの箸を突き付けながら説教をされて、田口は憮然とした。
島津が呆れた顔をする。

「そう怒ってやるなよ、速水。何事もなかったんだからいいだろ」
「何かあってたまるか!」

島津の言葉に速水は興奮気味に返した。島津は肩を竦めるだけに留めた。
缶ジュース片手の彦根が苦笑めいた笑みを浮かべる。

「先輩ってどうもヘンなのに好かれるからなぁ……ま、これからも僕らで守ってあげますから、懲りずに遊びに行きましょうね」
「…………そりゃどうも」

何だかなぁ、と思いながら田口は取り敢えず後輩に頷いたのだった。
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