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12月企画の再録が終了した、のだっけな?
将軍行灯に2本、その他の人々に1本です。
2回目です。現時点で全4回の予定。
話の展開はテンプレート的に決まっている。
だけど予定はあくまで予定いぃ~~♪
12月企画の再録が終了した、のだっけな?
将軍行灯に2本、その他の人々に1本です。
2回目です。現時点で全4回の予定。
話の展開はテンプレート的に決まっている。
だけど予定はあくまで予定いぃ~~♪
オレンジ新棟が制作した、音楽劇もどきはよくある話だった。
男女が出逢って、恋に落ちて、トラブって、もう一度結ばれる。
言ってしまえばそれだけの話である。
速水に宛がわれているのは、ソロが2曲、デュエットが3曲。
多忙な救命救急センター部長様に、随分無理を押しつけるものである。
「あ、これ知ってる。こっちも多分……何とかなるんじゃないか?」
「お前が何とかなっても、俺が何とかならん」
速水が持っている楽譜を改めて検分し、田口はハードルが少し低くなったことを確認して安堵した。
しかし、速水には知らない曲ばかりだ。
知っている曲は速水の担当ではない、というオチが付く。
ミュージカル映画に興味の薄かった速水には、そもそも基礎知識が不足しているのだ。
「取り敢えずお前はソロを何とかしろ。デュエットは失敗しても何とかなるだろうけど、ソロは取り繕えない」
「畜生、何でこんな面倒なことに…………」
田口のご下命に、速水は髪を掻き回しながら楽譜を睨みつけた。
「そういや、デュエットの相手って誰だ?」
コーヒーを用意しながら、ふと田口は尋ねた。
デュエットであるからには、オレンジ新棟の女性看護師か誰かだろうか。
楽譜から目を上げないまま、速水は答えた。
「小児科の浜田だ」
「浜田、看護師? 歌姫?」
「それ以外の人選は有り得ないだろ」
小児科の歌姫の話は田口も耳にしたことがあった。
確かに、彼女以外は考えられない。
田口は気の毒そうな目で速水を見た。
「お前、彼女の隣りで歌うのか……」
「だろ? どう考えても貧乏くじだっつーんだよ」
普通に歌ったって、彼女の隣りでは下手くそに聞こえてしまうだろう。
突出した才能は、嫌われることも多いものだ。
忙しいのに余計なことに時間を割かれ、挙句恥曝しでは、踏んだり蹴ったりもいいところだろう。
速水はうんざりした表情で天井を仰ぐ。
楽譜を見るのも嫌になってきているらしい。
せめて、少しくらいは手伝ってやろうと田口は心に決めた。
勿論、代わりに本番で歌えと言われたら、断固拒否させてもらうが。
「部長っ!」
「え」
部長室に入ってきた佐藤の気配に、速水は気付かなかった。
速水の気を引くために佐藤が机を叩いて、初めて目の前に佐藤が立っていることに気付いた。
虚を突かれた顔をした速水を、佐藤は溜息と共に見返した。
「悪ぃな。何かあったか?」
「いいえ。いつもの事務書類です。大体やっておきましたんで、確認とハンコお願いします」
「お、助かった」
事務処理が苦手とは言わないが、煩わしいに変わりはない。
佐藤がやってくれるなら、丸投げしたいところである。
佐藤の言葉に速水は笑みを浮かべた。
そんな速水に対し、もう一度佐藤は溜息を吐いた。
「大変そうですね」
「だろ?」
佐藤が入って来たのに気付かなかった理由。
速水の耳にはイヤホンが入っていたのである。
中身は勿論、院内ミュージカルで速水が宛がわれた曲だ。
業務の暇を見て覚えていかないと、本番にとても間に合わない。
「佐藤ちゃん、代われよ」
「お断りします」
「上司命令だぞ?」
「無理です。大体、俺が出たところで部長ほど女の子達は喜びませんから」
「…………自分で言うのは、悲しくないか?」
速水としても、解っていて無理難題を言ってみた。
最早単なる愚痴である。
佐藤の返答は素っ気無く、取り付く島も無い。
その上で却ってきたセリフに、速水は思わず突っ込んだ。
「そんな面倒背負いこむくらいなら、モテなくて良かったと本気で思いましたね、俺は」
佐藤は真顔でそう言った。真理である。
面倒事を背負いこんだモテ男であるところの速水は、長い溜息を吐くしかなかった。
男女が出逢って、恋に落ちて、トラブって、もう一度結ばれる。
言ってしまえばそれだけの話である。
速水に宛がわれているのは、ソロが2曲、デュエットが3曲。
多忙な救命救急センター部長様に、随分無理を押しつけるものである。
「あ、これ知ってる。こっちも多分……何とかなるんじゃないか?」
「お前が何とかなっても、俺が何とかならん」
速水が持っている楽譜を改めて検分し、田口はハードルが少し低くなったことを確認して安堵した。
しかし、速水には知らない曲ばかりだ。
知っている曲は速水の担当ではない、というオチが付く。
ミュージカル映画に興味の薄かった速水には、そもそも基礎知識が不足しているのだ。
「取り敢えずお前はソロを何とかしろ。デュエットは失敗しても何とかなるだろうけど、ソロは取り繕えない」
「畜生、何でこんな面倒なことに…………」
田口のご下命に、速水は髪を掻き回しながら楽譜を睨みつけた。
「そういや、デュエットの相手って誰だ?」
コーヒーを用意しながら、ふと田口は尋ねた。
デュエットであるからには、オレンジ新棟の女性看護師か誰かだろうか。
楽譜から目を上げないまま、速水は答えた。
「小児科の浜田だ」
「浜田、看護師? 歌姫?」
「それ以外の人選は有り得ないだろ」
小児科の歌姫の話は田口も耳にしたことがあった。
確かに、彼女以外は考えられない。
田口は気の毒そうな目で速水を見た。
「お前、彼女の隣りで歌うのか……」
「だろ? どう考えても貧乏くじだっつーんだよ」
普通に歌ったって、彼女の隣りでは下手くそに聞こえてしまうだろう。
突出した才能は、嫌われることも多いものだ。
忙しいのに余計なことに時間を割かれ、挙句恥曝しでは、踏んだり蹴ったりもいいところだろう。
速水はうんざりした表情で天井を仰ぐ。
楽譜を見るのも嫌になってきているらしい。
せめて、少しくらいは手伝ってやろうと田口は心に決めた。
勿論、代わりに本番で歌えと言われたら、断固拒否させてもらうが。
「部長っ!」
「え」
部長室に入ってきた佐藤の気配に、速水は気付かなかった。
速水の気を引くために佐藤が机を叩いて、初めて目の前に佐藤が立っていることに気付いた。
虚を突かれた顔をした速水を、佐藤は溜息と共に見返した。
「悪ぃな。何かあったか?」
「いいえ。いつもの事務書類です。大体やっておきましたんで、確認とハンコお願いします」
「お、助かった」
事務処理が苦手とは言わないが、煩わしいに変わりはない。
佐藤がやってくれるなら、丸投げしたいところである。
佐藤の言葉に速水は笑みを浮かべた。
そんな速水に対し、もう一度佐藤は溜息を吐いた。
「大変そうですね」
「だろ?」
佐藤が入って来たのに気付かなかった理由。
速水の耳にはイヤホンが入っていたのである。
中身は勿論、院内ミュージカルで速水が宛がわれた曲だ。
業務の暇を見て覚えていかないと、本番にとても間に合わない。
「佐藤ちゃん、代われよ」
「お断りします」
「上司命令だぞ?」
「無理です。大体、俺が出たところで部長ほど女の子達は喜びませんから」
「…………自分で言うのは、悲しくないか?」
速水としても、解っていて無理難題を言ってみた。
最早単なる愚痴である。
佐藤の返答は素っ気無く、取り付く島も無い。
その上で却ってきたセリフに、速水は思わず突っ込んだ。
「そんな面倒背負いこむくらいなら、モテなくて良かったと本気で思いましたね、俺は」
佐藤は真顔でそう言った。真理である。
面倒事を背負いこんだモテ男であるところの速水は、長い溜息を吐くしかなかった。
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