30000ヒットの海彦さまからのリクエストです。
海彦さま、有難う御座いました!
リク内容は「『Man in the moon』の月世界での話」ということでした。
何時の年代でもいいってことでしたが、折角ですので昔話を。
パラレル物にリクエストもらうと、凄く安心します。
許容して下さったんだなぁって思うから。
月世界ですので、将軍の出番ありません。あっても名前のみかも。
それではどうぞです。
後記:予想以上に長くなりそうなので、一度アップします。
なんてゆーか、このまま続けたら送信エラー起こしそうな気がする。
海彦さま、有難う御座いました!
リク内容は「『Man in the moon』の月世界での話」ということでした。
何時の年代でもいいってことでしたが、折角ですので昔話を。
パラレル物にリクエストもらうと、凄く安心します。
許容して下さったんだなぁって思うから。
月世界ですので、将軍の出番ありません。あっても名前のみかも。
それではどうぞです。
後記:予想以上に長くなりそうなので、一度アップします。
なんてゆーか、このまま続けたら送信エラー起こしそうな気がする。
「兄さん、ここにいたの」
弟の声に、キリウは遠く下界に投げていた視線を上げた。
半分呆れたような顔で、ナルミが周囲に茂る草を分けてやってくる。
キリウの横に立つと、わざとらしく溜息を吐いた。
「探すの苦労したよ」
「そうか? それにしては早かった気がするが」
苦労した、と言う割にナルミは涼しい表情だった。
場所は月帝宮殿の端っこ、訪れる者の無いような廃園だった。
野放図に草や木が伸び、不格好な実を付けている。
今、季節の香りを放つ蝋梅も、鳥に啄ばまれて斑になった枝だらけだ。
本当に、探すのには苦労するような場所なのだ。
「私が此処にいると知っていたのだろう?」
「此処は、兄さんのお気に入りだからね」
キリウが確信を持って問えば、ナルミは何でもない顔をして言った。
ナルミの言う通り、この廃園はキリウの気に入りの場所だった。
勉強や仕事に倦んだ時、一人で考えたい時、そんな時によくこの場所を訪れた。
この廃園を知ったのは随分と昔だった。
時間で言えば700年ほど前のこと。
「…………変わらないね、此処は」
「そうだな」
元々、月界は日々の変化に乏しい。
月の住人達は地上の者よりもずっと寿命が長く、その分悠長なのか、物事の変化を好まない傾向がある。
四季の変化はあるが、それは景色の彩りくらいの意味でしかない。
そんな月界にあってさえ、この廃園は変わらないと思える場所だった。
キリウが初めて此処を知った、あの日のままだ。
キリウにこの廃園を教えたのは、下界の人間となった田口だった。
「継の君さまぁっ!」
キリウは声を張り上げた。
宮殿の中で大声を上げてはいけないと教えられてはいるが、今はそんなことを言っていられなかった。
月帝太子であるコウヘイが、勉強の時間に抜け出して姿が見えなくなったのだ。
大人たちはてんやわんやで宮殿内を探し回っていた。
最も年の近い従兄としてコウヘイの遊び相手を勤めていたキリウも、心当たりを探していた。
「何処に行かれたのだか……っ」
キリウは口惜しい思いで呟いた。
コウヘイはかくれんぼがとても……はた迷惑なほど……上手なのだ。
そんなコウヘイを、大人たちはきっと見つけられないだろう。
見つけられるとしたら己しかいないと、キリウは思う。
宮殿内の心当たりは全て探した。
後は外しかない。
「うん……………………」
キリウは少し躊躇った。
宮殿の、建物の外に行ったことがなかったのだ。
ただでさえ月帝宮殿は壮大な建物だが、いろいろと禁止事項も多く、「月帝の甥」くらいの身分では立ち入れない場所が多かった。
その為、キリウは今まで建物の中でも必要最低限の場所にしか行ったことがない。
だが、キリウが入れる場所にコウヘイはいなかった。
「…………よし」
回廊から外を見て、キリウは決心を固める。
決意と共に一つ頷くと、回廊から庭へ飛び降りたのだった。
人の気配を避けるように避けるようにとキリウは進んだ。
勉強の時間に抜け出しているコウヘイも、きっとそうした筈だ。
守衛が立つ大門や、月帝の后妃寵姫たちが住まう後宮の建物を避けて進むと、いつしか人の気配すら疎らになっていた。
その代わりに、ほんのりと花の香りが漂い始める。
キリウは思わず口元を綻ばせた。
花の香りは好きだが、それ以外にも理由があった。
見つけた、と思った。
コウヘイがいるならこの辺りだろう。
花の香を手繰るように歩み続けると、足元に生え始めていた草は何時しか茂みとなっていた。
不格好に捩れた木が何本も植わっている。
黄色い実を付けた木もあったが、実が地面に落ちてしまっていた。
キリウの家の庭どころか、月界の何処にも有り得ない光景だ。
花の香りはますます強くなる。
ガサガサと茂みを鳴らしながら進んでいくと、黄色い花の下に一人の子供が寝転がっていた。
遠目でも、冬の冴え凍る月のように光る銀色の髪が解る。
キリウは静かに近付いて、子供の顔を見下ろした。
額の中央で、赤い真向き月の痣が浮かんでいる。
キリウが落とす影に気付いたのだろう、子供がゆっくりと瞼を上げた。
黄色の、春の朧に霞む月のような瞳が柔らかく笑う。
その眼差しを受け止めて、キリウも一つ笑みを浮かべた。
「こちらにいらっしゃいましたか、継の君」
「やっぱり、一番最初に私を見つけるのはキリウだね」
寝転がってキリウを見上げたまま、月帝太子コウヘイはふぅわりと笑った。
弟の声に、キリウは遠く下界に投げていた視線を上げた。
半分呆れたような顔で、ナルミが周囲に茂る草を分けてやってくる。
キリウの横に立つと、わざとらしく溜息を吐いた。
「探すの苦労したよ」
「そうか? それにしては早かった気がするが」
苦労した、と言う割にナルミは涼しい表情だった。
場所は月帝宮殿の端っこ、訪れる者の無いような廃園だった。
野放図に草や木が伸び、不格好な実を付けている。
今、季節の香りを放つ蝋梅も、鳥に啄ばまれて斑になった枝だらけだ。
本当に、探すのには苦労するような場所なのだ。
「私が此処にいると知っていたのだろう?」
「此処は、兄さんのお気に入りだからね」
キリウが確信を持って問えば、ナルミは何でもない顔をして言った。
ナルミの言う通り、この廃園はキリウの気に入りの場所だった。
勉強や仕事に倦んだ時、一人で考えたい時、そんな時によくこの場所を訪れた。
この廃園を知ったのは随分と昔だった。
時間で言えば700年ほど前のこと。
「…………変わらないね、此処は」
「そうだな」
元々、月界は日々の変化に乏しい。
月の住人達は地上の者よりもずっと寿命が長く、その分悠長なのか、物事の変化を好まない傾向がある。
四季の変化はあるが、それは景色の彩りくらいの意味でしかない。
そんな月界にあってさえ、この廃園は変わらないと思える場所だった。
キリウが初めて此処を知った、あの日のままだ。
キリウにこの廃園を教えたのは、下界の人間となった田口だった。
「継の君さまぁっ!」
キリウは声を張り上げた。
宮殿の中で大声を上げてはいけないと教えられてはいるが、今はそんなことを言っていられなかった。
月帝太子であるコウヘイが、勉強の時間に抜け出して姿が見えなくなったのだ。
大人たちはてんやわんやで宮殿内を探し回っていた。
最も年の近い従兄としてコウヘイの遊び相手を勤めていたキリウも、心当たりを探していた。
「何処に行かれたのだか……っ」
キリウは口惜しい思いで呟いた。
コウヘイはかくれんぼがとても……はた迷惑なほど……上手なのだ。
そんなコウヘイを、大人たちはきっと見つけられないだろう。
見つけられるとしたら己しかいないと、キリウは思う。
宮殿内の心当たりは全て探した。
後は外しかない。
「うん……………………」
キリウは少し躊躇った。
宮殿の、建物の外に行ったことがなかったのだ。
ただでさえ月帝宮殿は壮大な建物だが、いろいろと禁止事項も多く、「月帝の甥」くらいの身分では立ち入れない場所が多かった。
その為、キリウは今まで建物の中でも必要最低限の場所にしか行ったことがない。
だが、キリウが入れる場所にコウヘイはいなかった。
「…………よし」
回廊から外を見て、キリウは決心を固める。
決意と共に一つ頷くと、回廊から庭へ飛び降りたのだった。
人の気配を避けるように避けるようにとキリウは進んだ。
勉強の時間に抜け出しているコウヘイも、きっとそうした筈だ。
守衛が立つ大門や、月帝の后妃寵姫たちが住まう後宮の建物を避けて進むと、いつしか人の気配すら疎らになっていた。
その代わりに、ほんのりと花の香りが漂い始める。
キリウは思わず口元を綻ばせた。
花の香りは好きだが、それ以外にも理由があった。
見つけた、と思った。
コウヘイがいるならこの辺りだろう。
花の香を手繰るように歩み続けると、足元に生え始めていた草は何時しか茂みとなっていた。
不格好に捩れた木が何本も植わっている。
黄色い実を付けた木もあったが、実が地面に落ちてしまっていた。
キリウの家の庭どころか、月界の何処にも有り得ない光景だ。
花の香りはますます強くなる。
ガサガサと茂みを鳴らしながら進んでいくと、黄色い花の下に一人の子供が寝転がっていた。
遠目でも、冬の冴え凍る月のように光る銀色の髪が解る。
キリウは静かに近付いて、子供の顔を見下ろした。
額の中央で、赤い真向き月の痣が浮かんでいる。
キリウが落とす影に気付いたのだろう、子供がゆっくりと瞼を上げた。
黄色の、春の朧に霞む月のような瞳が柔らかく笑う。
その眼差しを受け止めて、キリウも一つ笑みを浮かべた。
「こちらにいらっしゃいましたか、継の君」
「やっぱり、一番最初に私を見つけるのはキリウだね」
寝転がってキリウを見上げたまま、月帝太子コウヘイはふぅわりと笑った。
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COMMENT
うれしくて…
今晩は、リクエストを受けていただき、ありがとうございました。パソコン前で、うれしくてニヤニヤジタジタしております。
他のパラレルも好きですが。行灯先生の、浮世離れした感じが伝わる「Man in the moon」が大好きでした。
それでは、続き楽しみにしておりますが、くれぐれも、無理はなさいませんよう ご自愛ください。
海彦
他のパラレルも好きですが。行灯先生の、浮世離れした感じが伝わる「Man in the moon」が大好きでした。
それでは、続き楽しみにしておりますが、くれぐれも、無理はなさいませんよう ご自愛ください。
海彦
Re:うれしくて…
いらっしゃいませ。コメント有難う御座います。
予想外というか、いつも通りというか……話も進まないのに文字数ばっかり増えたので、前後編になりました。
続きは早急に! すみませぇん。
>行灯先生浮世離れ
実際浮かんでましたしね(笑)。
リク受付の為に読み返したら、どうにもナルミが可笑しかったです。何て美味しい役どころだろう、彼は。
ではではっ。また遊びにいらして下さいませ。
予想外というか、いつも通りというか……話も進まないのに文字数ばっかり増えたので、前後編になりました。
続きは早急に! すみませぇん。
>行灯先生浮世離れ
実際浮かんでましたしね(笑)。
リク受付の為に読み返したら、どうにもナルミが可笑しかったです。何て美味しい役どころだろう、彼は。
ではではっ。また遊びにいらして下さいませ。