12月企画、一理さまからのリクエストです。
一理さま、企画参加有難う御座いました!
リク内容は「学生時代X'mas前、浮かれて出てきた行灯狙いの害虫をせっせと駆除する将軍たち」ということです。
たち、と言うからにはすずめ四天王勢ぞろいで参りましょう。
やっぱりこういうお題はクリスマス前に上げたいですねえ。
あと何本かクリスマス絡みがあるので、頑張りたいぞ。
嘗て書いた「コンサートホールへようこそ」と同じ展開になりました。
私って芸がないのね……っ。
そんでもって実はコレ、リク№08へ続いたりします……。
い、いいのかな、そういうのって。
一理さま、企画参加有難う御座いました!
リク内容は「学生時代X'mas前、浮かれて出てきた行灯狙いの害虫をせっせと駆除する将軍たち」ということです。
たち、と言うからにはすずめ四天王勢ぞろいで参りましょう。
やっぱりこういうお題はクリスマス前に上げたいですねえ。
あと何本かクリスマス絡みがあるので、頑張りたいぞ。
嘗て書いた「コンサートホールへようこそ」と同じ展開になりました。
私って芸がないのね……っ。
そんでもって実はコレ、リク№08へ続いたりします……。
い、いいのかな、そういうのって。
「…………失敗したかなぁ」
雀卓を囲みながら彦根がそう呟くものだから、他の三人は彦根の手がよほど悪いのかと思った。
島津と速水はニヤリと唇を歪め、田口は相変わらずのぼんやり顔だ。
性質の悪い笑みを浮かべた先輩に気付き、彦根は顔を上げた。
「配牌のことじゃないですよ」
「じゃあ何だよ?」
麻雀やっている最中に、失敗するものが他にあるのか。
当然の疑問を口にしたのは島津だ。
彦根はひょいと肩を竦めると、あっさりした口調で言った。
「実は今日、カノジョと別れまして」
彦根の言葉に、先輩三人は顔を見合わせた。
カノジョと別れて、失敗した。
一瞬の沈黙の間にロジックを組み上げる。
「何だよ、未練たらたらなのか?」
「彦根にしては珍しいな」
速水が導き出したのは当然の結論だった。
田口がちょっと首を傾げる。
彦根はそこそこモテる部類だが、何処か薄情な部分のある男だった。
来る者拒まず去る者追わずの典型だ。
別れたカノジョに想いを残すというようなことは殆ど無い。
だからこそ、先輩は揃って怪訝に思っているのである。
だが、彦根は首を横に振った。
「未練があるワケじゃないですよ。ただ、今別れたらクリスマスを過ごす相手がいないじゃないですか。あと半月で相手探すのって無理があるでしょ」
「…………お前、いろいろ間違ってるぞ、それ」
島津は呻くように呟いた。
クリスマスを一緒に過ごす彼女が必要だから別れない、というのはかなり本末転倒している。
「別れて正解だったんじゃねえの? デート代とかプレゼント代とか、金使わないで済むだろ」
「…………それもどうかと思うなぁ」
違う意味で間違った意見を述べるのは速水だ。
速水に対しては、田口がぼそっとツッコミを入れた。
つまるところ、速水と彦根のクリスマス観は大いに歪んでいる。
「このままじゃクリスマスに暇を持て余しそうですよ」
彦根は麻雀牌と共に溜息を投げた。
ふと田口が顔を上げて、彦根に目を向けた。
「それじゃあさ、コンサート行かないか?」
「へ? 先輩とですか?」
「行灯?」
彦根と、何故か速水が同じように目を見開いた。
速水の反応には気付かず、彦根を見たまま田口は一つ頷いた。
「オケ部のクリコン誘われてるんだ。桜宮女子とかと合同でやるんだってさ。チケットのノルマ厳しいらしいから、客が増えれば向こうも嬉しいだろ?」
クリコン、はクリスマスコンサートの学生的略称だ。
東城大学には一応オーケストラ部があるが、年末恒例の第九を演奏出来る程の規模ではない。
今回のコンサートは、近隣の幾つかの大学サークルと共に、クリスマスキャロルやクリスマスソングをメインに据えたものである。
「ちっ、出遅れたか」
田口の言葉に、速水は舌打ちした。
彦根と島津は呆れたような顔で速水を見る。
一人、速水の意図が解らない田口だけが首を傾げていた。
速水は油断していたのだ。
田口とクリスマスを過ごしたかったが、今の田口に付き合っている相手はいない。どうせクリスマスは暇だろう。
そう思って、12月頭の現在まで、田口の予定を押さえていなかったのだ。
先を越されたかと思うと、顔も知らないオーケストラ部員が憎たらしくなってくる速水である。
「なあ。それ、俺も行っていいよな? な?」
「へ?」
「いいだろ? な?」
「え、あ、うん…………っ」
「よしっ」
突然の速水の申し出に、田口はきょとんと眼を丸くした。
その顔がちょっとカワイイ、などと思いながら、速水は田口に畳み掛ける。
速水の勢いに押されて、腰が引け気味になりながら、田口は頷いた。
田口の承諾を得た速水は拳を固めて喜んだ。
ますます田口は首を傾げてしまう。
「…………お前、そんなにクラシック好きだっけ?」
「いや、あんまし。なあ、お前にチケット寄越したのって女? 男?」
「男だよ、悪かったなっ」
速水の問いに、田口は途端に不貞腐れた顔をした。
クリスマスに同性の知人に誘われるなんて、クリスマスデートの相手のいない寂しい暇人だと思われているも同然なのだ。
速水の方は速水の方で、田口の答えに渋い顔をする。
クリスマスに、自分がステージを踏むコンサートに招待するなんて、下心があるようにしか思えない。
当日は田口の隣りに陣取って周囲に目を光らせることを、速水は堅く心に誓った。
「じゃあ僕も行こー。島津先輩はどうします?」
「…………俺も行くか」
田口と速水の様子を観察していた彦根が軽い調子で言った。
彦根と速水の目がちらっと合った。
その瞬間、「オケ部の不埒者強制排除」作戦が二人の間に成立する。
速水と彦根のアイコンタクトが何を意味するのか、薄々解ってしまった島津は、ちょっと草臥れた声で返事をした。
速水と彦根だけにしておくと事が大きくなる可能性が高く、そうなった場合に田口では二人を止められないだろう。
島津に選択の余地は皆無だった。
島津の返事に田口は笑った。
「何だ、結局クリスマスもこの四人で過ごすんだな」
その、ちょっと楽しそうな照れくさそうな田口の顔。
強烈なまでの可愛らしさに、速水は内心踊り上る。
そんな速水を彦根はにやにやと笑いながら、島津は溜息と共に見守っていたのだった。
雀卓を囲みながら彦根がそう呟くものだから、他の三人は彦根の手がよほど悪いのかと思った。
島津と速水はニヤリと唇を歪め、田口は相変わらずのぼんやり顔だ。
性質の悪い笑みを浮かべた先輩に気付き、彦根は顔を上げた。
「配牌のことじゃないですよ」
「じゃあ何だよ?」
麻雀やっている最中に、失敗するものが他にあるのか。
当然の疑問を口にしたのは島津だ。
彦根はひょいと肩を竦めると、あっさりした口調で言った。
「実は今日、カノジョと別れまして」
彦根の言葉に、先輩三人は顔を見合わせた。
カノジョと別れて、失敗した。
一瞬の沈黙の間にロジックを組み上げる。
「何だよ、未練たらたらなのか?」
「彦根にしては珍しいな」
速水が導き出したのは当然の結論だった。
田口がちょっと首を傾げる。
彦根はそこそこモテる部類だが、何処か薄情な部分のある男だった。
来る者拒まず去る者追わずの典型だ。
別れたカノジョに想いを残すというようなことは殆ど無い。
だからこそ、先輩は揃って怪訝に思っているのである。
だが、彦根は首を横に振った。
「未練があるワケじゃないですよ。ただ、今別れたらクリスマスを過ごす相手がいないじゃないですか。あと半月で相手探すのって無理があるでしょ」
「…………お前、いろいろ間違ってるぞ、それ」
島津は呻くように呟いた。
クリスマスを一緒に過ごす彼女が必要だから別れない、というのはかなり本末転倒している。
「別れて正解だったんじゃねえの? デート代とかプレゼント代とか、金使わないで済むだろ」
「…………それもどうかと思うなぁ」
違う意味で間違った意見を述べるのは速水だ。
速水に対しては、田口がぼそっとツッコミを入れた。
つまるところ、速水と彦根のクリスマス観は大いに歪んでいる。
「このままじゃクリスマスに暇を持て余しそうですよ」
彦根は麻雀牌と共に溜息を投げた。
ふと田口が顔を上げて、彦根に目を向けた。
「それじゃあさ、コンサート行かないか?」
「へ? 先輩とですか?」
「行灯?」
彦根と、何故か速水が同じように目を見開いた。
速水の反応には気付かず、彦根を見たまま田口は一つ頷いた。
「オケ部のクリコン誘われてるんだ。桜宮女子とかと合同でやるんだってさ。チケットのノルマ厳しいらしいから、客が増えれば向こうも嬉しいだろ?」
クリコン、はクリスマスコンサートの学生的略称だ。
東城大学には一応オーケストラ部があるが、年末恒例の第九を演奏出来る程の規模ではない。
今回のコンサートは、近隣の幾つかの大学サークルと共に、クリスマスキャロルやクリスマスソングをメインに据えたものである。
「ちっ、出遅れたか」
田口の言葉に、速水は舌打ちした。
彦根と島津は呆れたような顔で速水を見る。
一人、速水の意図が解らない田口だけが首を傾げていた。
速水は油断していたのだ。
田口とクリスマスを過ごしたかったが、今の田口に付き合っている相手はいない。どうせクリスマスは暇だろう。
そう思って、12月頭の現在まで、田口の予定を押さえていなかったのだ。
先を越されたかと思うと、顔も知らないオーケストラ部員が憎たらしくなってくる速水である。
「なあ。それ、俺も行っていいよな? な?」
「へ?」
「いいだろ? な?」
「え、あ、うん…………っ」
「よしっ」
突然の速水の申し出に、田口はきょとんと眼を丸くした。
その顔がちょっとカワイイ、などと思いながら、速水は田口に畳み掛ける。
速水の勢いに押されて、腰が引け気味になりながら、田口は頷いた。
田口の承諾を得た速水は拳を固めて喜んだ。
ますます田口は首を傾げてしまう。
「…………お前、そんなにクラシック好きだっけ?」
「いや、あんまし。なあ、お前にチケット寄越したのって女? 男?」
「男だよ、悪かったなっ」
速水の問いに、田口は途端に不貞腐れた顔をした。
クリスマスに同性の知人に誘われるなんて、クリスマスデートの相手のいない寂しい暇人だと思われているも同然なのだ。
速水の方は速水の方で、田口の答えに渋い顔をする。
クリスマスに、自分がステージを踏むコンサートに招待するなんて、下心があるようにしか思えない。
当日は田口の隣りに陣取って周囲に目を光らせることを、速水は堅く心に誓った。
「じゃあ僕も行こー。島津先輩はどうします?」
「…………俺も行くか」
田口と速水の様子を観察していた彦根が軽い調子で言った。
彦根と速水の目がちらっと合った。
その瞬間、「オケ部の不埒者強制排除」作戦が二人の間に成立する。
速水と彦根のアイコンタクトが何を意味するのか、薄々解ってしまった島津は、ちょっと草臥れた声で返事をした。
速水と彦根だけにしておくと事が大きくなる可能性が高く、そうなった場合に田口では二人を止められないだろう。
島津に選択の余地は皆無だった。
島津の返事に田口は笑った。
「何だ、結局クリスマスもこの四人で過ごすんだな」
その、ちょっと楽しそうな照れくさそうな田口の顔。
強烈なまでの可愛らしさに、速水は内心踊り上る。
そんな速水を彦根はにやにやと笑いながら、島津は溜息と共に見守っていたのだった。
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COMMENT
ありがとうございます!
霧島様
こんばんは。一理です。
素敵なお話ありがとうございます!
企画に参加させていただいてホントに良かったです。
将軍が12月頭まで何もせずにいるなんて…!油断大敵ですよね。どこに不埒者が潜んでいるかわからないんですから。
将軍とゲリラの間で交わされるアイコンタクトは「オケ部の不埒者強制排除作戦」でもそのコンビネーションを発揮してくれるのでしょうね。
これからも楽しみにしています。本当にありがとうございました。
こんばんは。一理です。
素敵なお話ありがとうございます!
企画に参加させていただいてホントに良かったです。
将軍が12月頭まで何もせずにいるなんて…!油断大敵ですよね。どこに不埒者が潜んでいるかわからないんですから。
将軍とゲリラの間で交わされるアイコンタクトは「オケ部の不埒者強制排除作戦」でもそのコンビネーションを発揮してくれるのでしょうね。
これからも楽しみにしています。本当にありがとうございました。
Re:ありがとうございます!
いらっしゃいませ。
こちらこそ、企画に参加して下さいまして有難う御座いました。
あんなんで宜しかったでしょうかねえ?
>将軍、油断大敵
クリスマスのレストラン予約とか、12月頭じゃ間に合わないか? 確かに出遅れてますね。クリスマスにカノジョのいない将軍を、誰も怪しまないんでしょうか?
コンサート当日の様子は続きでちらっと触れる予定ですので、そちらも目を通して下さると嬉しいです。
頑張ろう、うん。
こちらこそ、企画に参加して下さいまして有難う御座いました。
あんなんで宜しかったでしょうかねえ?
>将軍、油断大敵
クリスマスのレストラン予約とか、12月頭じゃ間に合わないか? 確かに出遅れてますね。クリスマスにカノジョのいない将軍を、誰も怪しまないんでしょうか?
コンサート当日の様子は続きでちらっと触れる予定ですので、そちらも目を通して下さると嬉しいです。
頑張ろう、うん。