お正月スペシャル――だけど、どんなんだっけ、コレ。
和風の花は花ことばも地味な気がします。今回は【分別】の一択です。
桜宮サーガの人々は皆いい大人ですので、分別の無い人はそうはいないと思います。
……って、それじゃ話にならねえよ!
和風の花は花ことばも地味な気がします。今回は【分別】の一択です。
桜宮サーガの人々は皆いい大人ですので、分別の無い人はそうはいないと思います。
……って、それじゃ話にならねえよ!
「クソガキ共が偉そうに…………っ」
滅多に聞いた事の無い、藤原看護師の歯軋りに田口は戦慄した。
額に青筋を立てて、そのくせ口元は笑っているのだから、尚いっそう恐ろしい。
詳しくは知らないが。どうやら東城大学医学部の実習生と一悶着あったらしかった。
愚痴外来室という閉鎖空間に引っ込んだ途端、藤原は怒りを爆発させたのだ。
「見てろよ、小僧どもが……単位をくれてなぞやるものか……私に口応えした事を末代まで悔むがいい……」
「ぜ、全力で呪ってる…………っ」
藤原の独り言はまるで呪詛だ。
田口には、背景に蛇を背負っているように見えた。
愚痴外来室の隅で震える田口に目もくれず、藤原は内線電話を取り上げる。
各科病棟に、不届き者を御注進するのだ。
先程までの呪いの口調とは一変、当たりのよいセールストークになっている。
「ほ、ほどほどにしてやって下さいね…………」
電話の間に、ようやっと田口は一言挟んだ。
既に半分以上の病棟に電話が終わっているので、手遅れかもしれなかったが。
フックを押して通話を切った状態で、藤原は田口を振り返って微笑む。
「社会の恐ろしさを教えてあげるのも、大人の仕事でしょう?」
そう言って、藤原は再び電話をかけ始めた。
大人は暴言吐かれたからって呪わないだろう、と密かに思ったが、田口は口にしなかった。
それこそ大人の分別というものだ。
電話の内容をじっくり聞くと怖いので、田口は書類仕事に集中したのだった。
PR
COMMENT