これ、カリンのことらしい。喉飴によく使われるヤツ。
何でもかんでも横文字にしないで下さい。
花言葉は【魅力、誘惑】です。今回は「誘惑」をチョイス。
色気方向には行きませんでした……行灯先生と地雷原ですもの。
隔離小部屋の愚痴外来室はやりたい放題的な?
何でもかんでも横文字にしないで下さい。
花言葉は【魅力、誘惑】です。今回は「誘惑」をチョイス。
色気方向には行きませんでした……行灯先生と地雷原ですもの。
隔離小部屋の愚痴外来室はやりたい放題的な?
「よいしょ。先生、こちらお裾分けね」
愚痴外来室に出勤した藤原看護師は、掛け声と共に紙袋をデスクに乗せた。
ごつん、とやや硬い音がする。
寝惚け半分で頭の回っていなかった田口はのろのろと紙袋に近づいた。
「有難う御座います。何ですか、これ?」
「カリン酒を作ってみたの」
「へぇ…………」
淡い琥珀の色をした液体の中に、角切りにされた果実が沈んでいる。
梅酒とかと同じ要領で作るのだろうと、田口はぼんやりと思う。
「カリン酒って、風邪とかに効きますかね?」
「どうかしらねぇ」
「ちょっと舐めてみたいな……」
カリン、喉飴、風邪と連想した田口は首を傾げて呟いた。
作った藤原本人は、薬効があるとはちっとも思っていないようだった。
興味がそそられる田口である。
だが、藤原が澄まし顔でストップをかけた。
「これから仕事ですよ、アルコールなど以ての外です」
「……はぁい」
珈琲にこっそり入れるのはよくても、酒自体は流石にダメだ。
幾ら田口でも社会人としての良識はそれなりに弁えている、つもりである。
誘惑に屈する前に、田口はカリン酒の瓶から目を反らしたのだった。
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