焼け野が原ｃｒｙ

もともとはゆめねこ様のキリリクに充てる予定だったのですが、予想以上に薄暗くなりそうだったので急遽予定変更した、その残骸です。
敗因？　参考にした曲が暗かったせい以外にないね！
今にして思えば、いくらワンフレーズ勝負とはいえ、あの曲でラブラブを書こうって方が間違っていたのだと解るってものです。


サイトを更新しています。
12月の企画とキリ番を再録。
ラヴィアンローズとスウィートライフと、長編番外編。
シリーズばかりですな。

向かい合わせの沈黙に耐えきれず、速水は視線を落とした。
手にしたマグカップの中で、真黒い液体が揺れる。
暗い水面に瞳が映る筈もなく、毒々しい色合いに胃が痛くなる気がした。
実際のところ、速水はストレス性と名の付く病気には無縁な性質であるが。
コーヒーと、沈黙と、恋。それらが伴う憂鬱。
目の前でゆるりと笑っている田口には、きっと、一生解らない。

「お前ばかり、ズルイよ」
「何？」

速水の呟きを音声しか捉えなかった田口は、笑顔のまま首を傾げる。
速水が焦がれている物と、田口が欲しがっている物。
それは互いで、二人ともが同じく願っている。
薄々とそれは解っているのに、田口の方は一向に動こうとしない。
聞こえないフリ、気付かないフリ、覚えていないフリ。
速水の熱情を流して、雨上がりの空のように笑う。
あんまり晴れやかな顔をするものだから、速水は動けなくなる。
田口が、ほんの瞬間でも自分を欲しがってくれたなんて、思った事も勘違いな気がしてしまう。

「…………言ってみろってんだ、バカ」

せめて一度。
ちゃんと、言って欲しい。
聞こえない声では意味がない。
速水に聞こえるように、その願いを言って欲しいのに。

「何だよ、さっきから。独り言？」

気安い友人の顔で田口は笑った。
焦がれる余りに焼け野になる心象風景の中で、ただ欲しいと思った。