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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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このお話は、箒さまからのリクエストです。
箒さま、2010メリクリあけおめ企画へのご参加有り難う御座いました。


リク内容は「ホットメニューな行灯と将軍」です。
真っ先に思ったのはやはりシチューでした。
しかしシチューからどうするか……と思い悩んでいるうちに話が横滑りしました。
まあ、「コレ」もホットメニューではある。
しかも食べてない……食べる前振りです、すんません。
そんなこんなですが、1作目です。
それではどうぞ。





コンビニエンスストアはいつでも煌々と明かりが灯っている。
ガラスを多用した店舗から漏れ出す光は、人工のものとはいえ、寒い夜には温もりさえ与えてくれる。
約束した訳ではないけれど、同じ帰り道。
定時退勤が出来なかった速水と自主残業の田口は、田口のペースで歩いているところだった。

「あ、寄っていいか」

言って、田口の返事を聞く前に速水は道を折れた。
田口が慌てて追いかける。

「買うモンあるのか?」
「チュッパが切れた」

ある意味当たり前の問いをした田口に、速水は簡潔に答える。
店内をぐるっと見回して菓子コーナーを探すと、今度はチュッパチャプスを探して棚を目線で撫で始めた。
別段、買うものの無い田口は手持無沙汰になってしまう。
何となく速水の隣りに立って上段のチョコ菓子など眺めていたが、購買意欲をそそられるようなものはなかった。
チョコ菓子よりも強烈に田口を誘うのは、店内に満ちる出汁の匂いだ。

「大根食いたい……」

呟いて、匂いに引っ張られるように田口はレジ前に立った。
冬のコンビニの風物詩、おでんがレジの前で煮えている。
献立リストをまじまじと見てしまった。
大根、たまご、ちくわと言った定番は解るが、ロールキャベツやウィンナーと言った新しいものには、つい首を傾げてしまう田口である。

「お決まりですか?」

こんな夜遅くまで働いている女性の店員さんに声をかけられたのが、最終的なきっかけになった。

「たまごと大根とこんにゃくを二つずつ、あとは……」

偶数にすることを考えつつ、自分の好みで選んでいく。
最初の三品を合わせて10点になったところで、田口はオーダーをストップした。

「×××円になります」
「あ、はい」
「すいません、これも」

財布の中身を数えたところで、田口の背後から手が伸びてきた。
固い音と共に、チュッパチャプスが5つカウンターに転がる。

「はい。合わせて×××円ですね」

当たり前の事だが、金額が増えた。
女性店員がおでんのパックを袋に入れている間、田口は速水を上目遣いに見る。
恨めしそうな目になったのは仕方の無いところだ。
速水の方は飄々とした表情である。

「ついでだろ」
「次はお前が奢れよ」
「チュッパをか?」
「……何か他の物で」
「ははっ」

それは余り嬉しくない事に田口は気付いた。
速水ほどチュッパチャプス依存ではない。
どうせなら別の物が良いと田口が呟けば、速水は一つ声を上げて笑った。

「お待たせ致しました」

おでんとチュッパチャプスの入った袋を差し出され、田口よりも先に速水が手を伸ばす。
反応速度の差か、腕の長さの差か。

「どうも」

あまり適切とは思えないけどつい口を突いた一言と共に、速水はビニール袋を受け取った。

「ありがとうございましたぁ」

語尾を伸ばす挨拶に見送られ、再び空気の冷えた冬の夜を歩き出す。

「さっむ」
「だな。早く帰ろうぜ」

暖房の効いた店内とのギャップに、ついつい当たり前のことを呟いた田口に、速水も頷いて言った。
速水の提案には田口も頷くばかりだ。

「そうだな、おでん冷めないうちに帰らなきゃな」
「ああ」

そうして二人は、今度は何となく早足で帰路についた。
さあ、一緒におうちへ帰りましょう。
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ありがとうございました
冬のコンビニおでんの魔力は絶大ですよね。
ちゃんと二人分おでんを購入する行灯先生と、しゃあしゃあと飴をたかる将軍の気安いやりとりに心がほっこりしました。
彼らはきっと、仲良く行灯先生の家に帰って炬燵に入りながらおでんをいただくんですね。好きな人とお家で食べるご飯は格別でしょう。将軍が羨ましいです。

改めて、素敵な作品をありがとうございました。
2010/12/19(Sun)16:31:47 編集
Re:ありがとうございました
いらっしゃいませ!
改めまして、企画参加有り難うございました。

>冬のコンビニおでんの魔力
肉まんといい勝負!
おでんを思い浮かべた途端、スルスルと話が出来上がりました。
おっさんくさい点がピッタリだったのかもしれない(笑)。
仰る通り、きっと行灯先生のおウチのおこたで一緒におでん食べるのだと思います。
まったりほっこり、暖かい場面を思い描いて頂ければ幸せです。

それではまた遊びにいらして下さいませっ。
S.Kirishima 2010/12/20 11:30
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