初さまのリクエストです。
……が、30001番の分だか、38888の分だか。どっちにします?
リク内容は「ラヴィアンローズシリーズで。」
リクエストにお悩みだったようですので、12月企画リクで頂いていた分を流用します。
きっとご本人も忘れているリク内容を引っ張り出すあたり、霧島さんはなかなか極道ですな。
ラヴィアンローズシリーズでカテゴリ作りました。
今後もこのシリーズでリク頂いた場合は、「キリリク」ではなくこちらに収納します。
私信:39000ヒットの東さま
メッセージ受信しました。こちらもラヴィアンローズですね。
……今年の桜の開花早いって? 急がねばっ。
……が、30001番の分だか、38888の分だか。どっちにします?
リク内容は「ラヴィアンローズシリーズで。」
リクエストにお悩みだったようですので、12月企画リクで頂いていた分を流用します。
きっとご本人も忘れているリク内容を引っ張り出すあたり、霧島さんはなかなか極道ですな。
ラヴィアンローズシリーズでカテゴリ作りました。
今後もこのシリーズでリク頂いた場合は、「キリリク」ではなくこちらに収納します。
私信:39000ヒットの東さま
メッセージ受信しました。こちらもラヴィアンローズですね。
……今年の桜の開花早いって? 急がねばっ。
東城大教育学部附属幼稚園教諭・歌波(うたは)は、正直、恐れ慄いていた。
幼稚園女児というものは、こうもこましゃくれた生き物だっただろうか。
己の幼稚園時分を思い出そうとしても、級友と恋バナをした記憶など出てこなかった。
「私、慎太郎くーん」
「私はねぇ、ハリーが好き――っ」
「え――、殿だよ! 殿がカッコいいよ」
「えぇ~~?!」
つまり、一部女児の間で話題になっているのは芸能人で誰がカッコいいかという話だった。
歌波が口出し出来ずに見守る先で、会話に巻き込まれているのは速水家の双子・晃子と公子である。
公子がおっとりと首を傾げた。
「慎太郎くんって、だぁれ?」
「ジュニアだよ。紅白に出てたの、見てない?」
「ん――解んなぁい」
横で聞いていた歌波は納得して心の中で頷いたが、公子はやっぱり首を傾げる。
「ハリーは知ってるでしょ?」
「えっとぉ……?」
「ハリー・ポッター!」
「あ、知ってる!」
それを言うなら、ダニエル・ラドクリフ。
歌波のツッコミを余所に、晃子が大きく頷いた。
最後の「殿」は戦隊物の主役らしいが、公子も晃子も、そして歌波も知らなかった。
「じゃあ、あきちゃんときみちゃんは、誰がカッコいいの?」
「知らない」か「知ってるけどカッコいいと思わない」ばかりの速水姉妹の反応は、級友たちのお気に召さなかったらしい。
そんな風に問われて、晃子と公子は互いに顔を見合わせた。
それから一つ頷き、二人は声を揃えて堂々と宣言する。
「「パパ!」」
歌波は大いに納得した。
確かに、速水姉妹の父親はカッコいい。
美男子で、愛妻家の子煩悩というところがまたポイント高い。
歌波はそう思うのだが、子供たちには賛否両論というところらしかった。
「あきちゃん達のパパって背ぇ大っきいもんね――っ」
「えー、パパなんてカッコよくないよぉ」
五歳児だって、女は三人寄れば姦しい。
にぎやかになった教室を、そろそろ宥めた方がいいかと歌波が思った時だった。
男の子の声が一つ混ざった。
「お前ら、ファザコン」
「ふぁざ、こん?」
言葉の意味が解らなくて、公子が首を傾げた。
意味が解らなくても悪意があると感じた晃子は、眦を吊り上げる。
発言者の桐生涼は、子供特有のバランスをした身体で胸を反らした。
「父ちゃんにベッタリの甘ったれをファザコンって言うんだってさ!」
「ちょ、涼くんっ」
「ふぇえ…………っ」
ファザーコンプレックスの定義はそうではないが、今の問題は定義の正確さではない。
歌波が涼を黙らせるより先に、公子の涙腺が緩んだ。
そうなると、晃子の堪忍袋の緒が切れる。
「何よっ、バカ涼っ!」
「ふ、二人とも止めなさあいっ!!」
蹴りと手払いの応酬を繰り返す二人を、歌波は最大肺活量で怒鳴りつけたのだった。
「…………と、いうワケでして」
「はあ」
幼稚園の先生から、我が子の今日の様子を聞くのは保護者の楽しみである。
晃子の脚に青痣が出来た理由を説明され、速水晃一は曖昧に頷いた。
反応が微妙になったのは、一応人前である為だ。
内心では、愛娘たちが「父親はカッコいいと思っている」という点に小躍りしていた。
生憎と今日は不定愁訴外来業務で出勤している田口が傍にいたら、喜びを分かち合いたいところである。
と、そこへ年長組の男児が寄ってきた。
「あら、恭一くん」
「お、こんにちは、恭一くん」
「あきちゃんときみちゃんのお父さん、こんにちは」
涼の兄・恭一だった。
学年違いにも関わらず速水家両親と恭一が顔見知りなのは、晃子が涼と取っ組み合いをする度に、彼が謝罪しに来るからだ。
しっかりし過ぎていて、少々気の毒な気がするくらいである。
そして今日も、恭一は速水にきちんと頭を下げた。
「悪口言ってゴメンなさい」
「ゴメンなさい…………」
涼の声は兄と比べると大分小さい。
だが、きちんと謝ることが出来るのは立派なことだ。
速水は一つ頷いた。
「こっちこそ、あきが乱暴でゴメンな」
速水の言葉に、恭一は肩の力が抜けたような顔をする。
それから速水の顔をまじまじと見た。
「ん??」
怪訝に思った速水が目線で尋ねると、恭一は大きく一つ頷いた。
「僕、大きくなったらおじさんよりカッコよくなってみせるっ」
「は?」
唐突すぎる宣言に、速水はきょとんとしてしまった。
一体何だそりゃ、という気分である。
横で聞いていた担任教諭が、苦笑交じりに呟いた。
「あら、ライバル宣言」
「へ」
その言葉を理解するのに少々かかり……理解した瞬間、速水は盛大に舌打ちした。
「冗談じゃないっ! きみもあきも、あんなクソ生意気なガキにやるもんかっ!」
朝っぱらから速水の血圧は高い。
居もしない娘の、ありもしないボーイフレンドに、真剣に怒っているのだ。
これで本当に娘がいて交際相手など連れてきたら、コイツ本気で憤死するんじゃなかろうか。
不定愁訴外来で捲し立てる速水をぼんやり観察しながら、田口は朝のコーヒーをゆったりと味わったのだった。
幼稚園女児というものは、こうもこましゃくれた生き物だっただろうか。
己の幼稚園時分を思い出そうとしても、級友と恋バナをした記憶など出てこなかった。
「私、慎太郎くーん」
「私はねぇ、ハリーが好き――っ」
「え――、殿だよ! 殿がカッコいいよ」
「えぇ~~?!」
つまり、一部女児の間で話題になっているのは芸能人で誰がカッコいいかという話だった。
歌波が口出し出来ずに見守る先で、会話に巻き込まれているのは速水家の双子・晃子と公子である。
公子がおっとりと首を傾げた。
「慎太郎くんって、だぁれ?」
「ジュニアだよ。紅白に出てたの、見てない?」
「ん――解んなぁい」
横で聞いていた歌波は納得して心の中で頷いたが、公子はやっぱり首を傾げる。
「ハリーは知ってるでしょ?」
「えっとぉ……?」
「ハリー・ポッター!」
「あ、知ってる!」
それを言うなら、ダニエル・ラドクリフ。
歌波のツッコミを余所に、晃子が大きく頷いた。
最後の「殿」は戦隊物の主役らしいが、公子も晃子も、そして歌波も知らなかった。
「じゃあ、あきちゃんときみちゃんは、誰がカッコいいの?」
「知らない」か「知ってるけどカッコいいと思わない」ばかりの速水姉妹の反応は、級友たちのお気に召さなかったらしい。
そんな風に問われて、晃子と公子は互いに顔を見合わせた。
それから一つ頷き、二人は声を揃えて堂々と宣言する。
「「パパ!」」
歌波は大いに納得した。
確かに、速水姉妹の父親はカッコいい。
美男子で、愛妻家の子煩悩というところがまたポイント高い。
歌波はそう思うのだが、子供たちには賛否両論というところらしかった。
「あきちゃん達のパパって背ぇ大っきいもんね――っ」
「えー、パパなんてカッコよくないよぉ」
五歳児だって、女は三人寄れば姦しい。
にぎやかになった教室を、そろそろ宥めた方がいいかと歌波が思った時だった。
男の子の声が一つ混ざった。
「お前ら、ファザコン」
「ふぁざ、こん?」
言葉の意味が解らなくて、公子が首を傾げた。
意味が解らなくても悪意があると感じた晃子は、眦を吊り上げる。
発言者の桐生涼は、子供特有のバランスをした身体で胸を反らした。
「父ちゃんにベッタリの甘ったれをファザコンって言うんだってさ!」
「ちょ、涼くんっ」
「ふぇえ…………っ」
ファザーコンプレックスの定義はそうではないが、今の問題は定義の正確さではない。
歌波が涼を黙らせるより先に、公子の涙腺が緩んだ。
そうなると、晃子の堪忍袋の緒が切れる。
「何よっ、バカ涼っ!」
「ふ、二人とも止めなさあいっ!!」
蹴りと手払いの応酬を繰り返す二人を、歌波は最大肺活量で怒鳴りつけたのだった。
「…………と、いうワケでして」
「はあ」
幼稚園の先生から、我が子の今日の様子を聞くのは保護者の楽しみである。
晃子の脚に青痣が出来た理由を説明され、速水晃一は曖昧に頷いた。
反応が微妙になったのは、一応人前である為だ。
内心では、愛娘たちが「父親はカッコいいと思っている」という点に小躍りしていた。
生憎と今日は不定愁訴外来業務で出勤している田口が傍にいたら、喜びを分かち合いたいところである。
と、そこへ年長組の男児が寄ってきた。
「あら、恭一くん」
「お、こんにちは、恭一くん」
「あきちゃんときみちゃんのお父さん、こんにちは」
涼の兄・恭一だった。
学年違いにも関わらず速水家両親と恭一が顔見知りなのは、晃子が涼と取っ組み合いをする度に、彼が謝罪しに来るからだ。
しっかりし過ぎていて、少々気の毒な気がするくらいである。
そして今日も、恭一は速水にきちんと頭を下げた。
「悪口言ってゴメンなさい」
「ゴメンなさい…………」
涼の声は兄と比べると大分小さい。
だが、きちんと謝ることが出来るのは立派なことだ。
速水は一つ頷いた。
「こっちこそ、あきが乱暴でゴメンな」
速水の言葉に、恭一は肩の力が抜けたような顔をする。
それから速水の顔をまじまじと見た。
「ん??」
怪訝に思った速水が目線で尋ねると、恭一は大きく一つ頷いた。
「僕、大きくなったらおじさんよりカッコよくなってみせるっ」
「は?」
唐突すぎる宣言に、速水はきょとんとしてしまった。
一体何だそりゃ、という気分である。
横で聞いていた担任教諭が、苦笑交じりに呟いた。
「あら、ライバル宣言」
「へ」
その言葉を理解するのに少々かかり……理解した瞬間、速水は盛大に舌打ちした。
「冗談じゃないっ! きみもあきも、あんなクソ生意気なガキにやるもんかっ!」
朝っぱらから速水の血圧は高い。
居もしない娘の、ありもしないボーイフレンドに、真剣に怒っているのだ。
これで本当に娘がいて交際相手など連れてきたら、コイツ本気で憤死するんじゃなかろうか。
不定愁訴外来で捲し立てる速水をぼんやり観察しながら、田口は朝のコーヒーをゆったりと味わったのだった。
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