かぼちゃ王子の憂鬱・３

週イチじゃ終わらないだろうから、ちょっと頑張るかぼちゃ王子。
しかし最早ハロウィーン関係なくないだろうか、これ？
かぼちゃかぼちゃと連呼しているあたりが、唯一ハロウィーンっぽいところかもしれない。

ちなみにウィキで調べてみたけど、何かがごっちゃになったお祭りとしか言いようがない……。
日本のハロウィーンは魔改造のレベルと言えよう。
どうしてハロウィーンでお姫様ドレスを着るかな……。

「で、結局その会議、何を話し合おうっていうんだ？」

無理難題を嫌々ながら引き受けてきた王子様は、ご学友に相談することにしました。
当然の疑問をご学友Aは投げかけます。
王子様はぴらりん、と出席要請書を翻しました。

「『健全な青少年を育成する、政治的に正しい行事のあり方について』だってさ」
「何だ、そりゃ」

ご学友Bが呆気に取られます。
ご学友Aも、同じく呆れた顔で溜息を吐きました。
王子様もまったくの同感です。

「俺らのやってることって、どこをどうすりゃ健全になるんだ？」

ご学友Bこと血塗れ将軍は、血糊を混ぜながら言いました。
別に、ハロウィーンの国に軍隊があって、将軍がいるわけではありません。
これは単なる渾名です。
ご学友Bの得意技は、超絶リアルな血糊作りと流血メイクなので、その渾名がついただけです。

「まったくだな」

ご学友Aことヒゲ魔人がもっともらしく頷きます。
ご学友Aの得意技は、着ぐるみモンスター作りです。
堂々たる体躯と厳つい顔は自前です。着ぐるみではありません。
ご学友たちの身も蓋も無い意見に、王子様は溜息を吐きつつ頷きます。

「俺だってそう思うよ」

よく考えてみて下さい。
ハロウィーンってどんな行事でしょうか？
お化けのカッコをしてご近所を回り、「Trick　or　Treat！」と唱えてお菓子をせびるイベントです。
お菓子が貰えなかったら、窓ガラスを割ったりポストを叩き壊したり壁に落書きしたり……はしないけど、いろいろ報復するイベントです。
このイベントって健全でしょうか？

「大体よぉ、真っ向から健全なイベントのなーにが楽しいんだか」

出来上がった血糊を自分の白衣にブチ撒けて、「血塗れ将軍」は胸を反らします。
今年の血糊も、大層よい出来栄えです。
余りの大盤振る舞いぶりは、映画で言うなら確実にレーティングが入るレベルです。
ちっとも健全ではありません。

「うわぁ…………」

血糊と解っていても、王子様は気持ち悪そうな顔で目を反らしました。
そんな王子様を、ご学友たちは揃って呆れた顔で見ています。

「お前、相変わらずダメだなぁ。演出には不可欠だっつーのに」
「だから行灯って呼ばれるんだぞ」
「呼んでるのはお前らだけだ」

古い渾名を持ち出されて、王子様は不貞腐れました。
「行灯」は怠け者で常日頃よりぼーっとしている王子様に、ご学友たちがつけた渾名です。
昼行灯の意味ですが、ハロウィーンのジャック・オ・ランタンも引っ掛けて、「お前にゃぴったりだ」と笑ったのはご学友Ｂでした。
閑話休題。

「しかし、そういうお題じゃ、王様が引っ掻き回してこいという理由も解るな」
「せいぜい滅茶苦茶にしてやれよ」

ご学友たちは口々に王子様を応援します。
面白がっている様子を隠そうともしません。
そんな、ご学友たちの無責任な声援に、王子様は長い長い溜息を吐くのでした。