花の2区で小噺を。

正月といえば箱根駅伝。あれは日本人の美学だ。
そんなことを言いながら、こういう阿呆な妄想をする管理人は、大概末期だと思います。
おそらく同ネタ多数。やったモン勝ち。

ここ数年、大晦日と元旦に当直を入れる為、速水は正月二日に休みを確保している。
そして、田口の下宿でこたつにもぐりながら駅伝を見るのも、ここ数年の恒例だった。
こたつの上には日本酒と幾許かのつまみ、そしてみかん。
テレビの駅伝は、外国人留学生が猛烈な追い上げを見せている。
若いなあ大学生、なんてしみじみ思っていると、カメラが切り替わってアナウンスが入った。

『先頭は東海道最初の難所、権太坂に差し掛かろうとしております』
「…………ぶっ」

ふと田口が噴き出した。
そのまま喉の奥でくつくつと笑っている。

「何だよ、行灯」
「いや…………さっきの地名」
「地名？　権太坂？」
「病院長を思い出した」

田口の言葉に、速水も腹黒タヌキ病院長を思い出した。
高階病院長はご自分の名前が大嫌いだそうだ、という噂は速水も耳にしている。
苦虫を噛み潰したような顔の病院長を思い浮かべて、速水も可笑しくなってきた。
田口の方も楽しそうにくつくつと笑い続けている。
追い討ちをかけるように、熱心なアナウンサーの台詞が入った。

『権太坂頂上で、後続との時間差を計ってみましょう』

速水と田口は二人揃って噴き出した。
酒も効いているせいか、こんなバカバカしい話でけらけら笑い合う。
しかしこの長閑さこそが、正しい正月の光景なのだろう。